お盆こばなし➂

 前回の続き~今から18年前、京都でお寺の勉強(修行ともいう)をしていたボクは、夏の休暇期間にお盆参りデビューをすることになった。京都から、初めて向かう街、愛知県豊田市に電車を乗り継いで向かったのであった。初めてお手伝いさせていただくお寺は豊田駅のすぐそばにあった。とっても優しいご住職さんと坊守(ぼうもり。奥さんのこと。)さんが出迎えて下さり、ご挨拶。お手伝い期間は1週間。その間の宿泊はお寺、いわゆる住込み。車もお寺が用意してくださったものをお借りする。いたれり、つくせり。明日からのお盆参りのルートを坊守さんと確認し、ワクワクとドキドキであまり寝られなかった記憶がある。
 初日はお寺の役僧さん(正式には法務員。ほうむいんとは、住職の補佐役であり、お寺に勤めている僧侶のことです)と一緒にまわり、確か7件程の御門徒さんの家をまわり、終了時にはもうすでに日が沈み、あたりは真っ暗。次の日からは独り立ち。自分で運転し、約束した時間に1件1件伺い、お仏壇の前でお参りさせていただく。内容的には「阿弥陀経」と「一口法話」。これが自分にとっては本当に良い経験をさせてもらいました。阿弥陀経はこの時、公式の場で読んだことがまだ無かったのでもちろん事前に練習はしたし、一口法話に関しても短い時間で何を伝えるか、を意識しながらあれやこれや足りない頭で考えた、つもりである。
 2日目。いよいよ独り立ち。どんとこい!の精神でナビと地図を駆使しながら、1件目にお約束した家に無事、到着。お参りのあとにお茶をいただいた。この時に、御門徒さんとの話しに花が咲くともうダメ。2件目、3件目とどんどん後のおうちに到着する時間が遅れるのである。ベテラン僧侶ならばこの辺のバランスを熟知し、今の家から次の家、渋滞も含め頭の中で瞬時に距離間を計算し、上手に御門徒さんとの話しを楽しむことができるのだろう。
 が、しかし。ボクはこの時何もかも初めて。最初の家に無事、到着したところまでは良かったが、1件目の家でまんまと話しに花が咲いてしまったのである…。土地勘ゼロのボクは次の家がここから何分かかるかも知らず、そのお家に長居してしまったのだ(完全にボクのせいです)
我ながら、アホ過ぎて涙が出ます。…まだまだ続く。